まとめ)2024年度 第2回コメディカル在宅医療推進協議会
東山医師会 2024年度 第2回コメディカル在宅医療推進協議会報告
去る11月9日コメディカル在宅医療推進協議会を開催いたしました。今回は
「なぜ医者は疥癬を誤診するのか」河合医院 院長 河合 尚樹 先生
「在宅医療における創傷管理、褥瘡管理」京都第一赤十字病院 皮膚・排泄ケア認定看護師 小原 優子 様
の、2件のご講演をいただきました。
第一題は患者さんが痒みを訴えたとき、医師の陥るピットフォールとして疥癬がある、ということです。痒みを訴える患者に対し、ステロイド外用剤を処方しても無効なとき、ステロイド剤の種類を変えることが多いですが、ちょっと立ち止まって、疥癬を考えてみる、ということです。疥癬の経過は、感染後10〜14日、長いと30日の潜伏を経て、痒みのある丘疹を認めます。夜間のほうが痒みが強いそうです。治療薬は世界では日本未承認のペルメトリンクリームを使用しています。日本では内服はイベルメクチン(ストロメクトール)、外用剤はオイラックスHが使用されます。
私自身も痒みのある丘疹に対し、ステロイド剤を使用することが多いので、注意すべきこととして肝に銘じました。
第二題は在宅医療における創傷管理、褥瘡管理、です。
創傷は急性創傷と、慢性創傷に分類されます。生体は外部から損傷を受け、組織の欠損が生じると、一連の治癒機構が働きます。糖尿病性壊疽や褥瘡のような慢性創傷では治癒機構に障害が発生しており比喩機構の反応が停止しています。創傷の治癒過程は@出血凝固期、A炎症期、B増殖期、C再構築期にわけられますが、慢性創傷、特に褥瘡では炎症期が遷延していることが多いです。炎症期から増殖期に移行するためには創傷環境調整Wound bed
Preparationという考え方が提唱されています。創傷治癒を妨げる因子を排除することでなおおりにくい状況を改善するというものです。排除すべき4項目は@壊死組織、A感染、B湿潤の不均衡、C創周辺の表皮進展不良です。
さらに在宅で重要となる褥瘡に特化していきます。褥瘡に細菌が存在するだけでは宿主に害を及ぼしませんが、創に定着し、細菌数が増加していくと宿主に害を及ぼしていきます。創の治療ケアにはバイオフイルムを取り除くことが必要です。バイオフイルムを取り除くには@定期的なデブリードマン、A物理的な洗浄があります。@に使用されるものは剪刀、鋭匙、ガーゼなどがあります。
新しい創傷治癒の方法として、以前は乾燥させるのが主流でしたが、適度な湿潤環境を維持することにより、創傷治癒を促す湿潤環境下療法があります。但し浸出液が多いと創周囲を浸軟しタンパク分解酵素が皮膚を侵すことがあるので、適度な量にコントロールすることが必要です。壊死組織を除去すると治癒過程が進み肉芽形成が進みます。肉芽形成を促進するには外用薬、創傷被覆材を使うことも有効です。創傷被覆材には古典的な医療材料のガーゼや近代的ないドレッシング材があります。ドレッシング材は機能的に優れたものも多く必要に応じて使い分けます。在宅医療においてドレッシング材使用は@医師が訪問し処置する、A医師の指示により訪問看護師が処置する、B家族、患者が使用する、が考えられます。ドレッシング材使用における留意点は感染創に使用しない、「長くもたせる」ことを目標にしない、皮膚の感染に注意する、などです。
以前は医師が直接処置した場合のみドレッシング材の保険算定が可能でしたが、2014年より、院外処方箋による保険薬局からの供給分にも保険算定ができるようになり前述のように訪問看護師、家族の使用分にも保険算定ができるようになりました。
在宅で療養される患者が増えるにつれ、褥瘡を含む創傷管理の必要性が高くなってきています。
今回は新たな知識を得ることができ、大変ありがたかったです。
講演後はグループごとに在宅医療に関する悩み事を話し合ったり、新しく来られた方と親交を深めることが出来ました。
今回出席者は36名でした。次回もぜひご参加よろしくお願いいたします。
在宅医療担当理事 田中愛子
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